少し前に見たTEDのプレゼンをたまたま昨日、ジムで再度観ていた。登壇者は、MITのEsther Duflo教授。
援助が善か、悪かのマクロ論争に対するデータは無いと前置きした後、ミクロレベルでの援助の3つをデータで検証している。その内の1つが、マラリアネットをただで配るべきか否かについてで、以下の三つの問いをなげかけている。
- マラリアネットをただであげる代わりに、人々に売る場合、そもそも人々はお金を払ってまで購入するのか?
- マラリアネットをただであげると、ありがたみが無くなり、ネットの使用率は減るのか?
- マラリアネットを一度ただで上げてしまうと、「援助なれ」してしまい、将来もタダでもらうことを期待し、二回目から自分でお金を出して購入しないのではないか?
「援助が悪」派の主張は、「タダで上げると、ありがたみが無くなり、援助慣れを生んで、将来ネットを売ろうとしても売れず、悪循環が起こる。よって、このような援助は、サステイナブルではない。」というところ。さて、実際にデータを使って検証するとどうか。
1:マラリアネットをただであげる代わりに、人々に売る場合、そもそも人々はお金を払ってまで購入するのか?
ケニアでの調査によると、答えは「高ければ高い程、購入する確率が低下する」。常識的に考えても、これは納得がいく答え。何かをただであげるよと言われれば、じゃあもらって思うかということになるし(ほぼ100%)、三ドル払えと言われれば、財布のひもも緩まない(20%以下)。一ドルだったら、まあ払おうかなという感覚(約60%)。
2.マラリアネットをただであげると、ありがたみが無くなり、ネットの使用率は減るのか?
同じ調査の結果によると、「ただで上げても、いくらで売っても、人々は同じ様にネットを使う」。80%以上の人が一様にネットを使用しているという。言いかえれば、ただであげても、ありがたみは無くならないということ。
3.マラリアネットを一度ただで上げてしまうと、「援助なれ」してしまい、将来もタダでもらうことを期待し、二回目から自分でお金を出して購入しないのではないか?
ただでもらった人の内20%は、一年後に2ドルを出して買っている一方、3ドル出して購入した人の内、1年後2ドルで購入した人は10%強。つまり、一回ただであげても、「援助なれ」という現象は起こっていない。
さて、この結果は、援助政策にとってどういう意味があるのだろうか。マラリアネットに限って言えば、「どんどんタダで配れ」ということになる。マラリア・ネットの価格と普及に関する調査は、実際、非常に多く、皆同じ結果が出ている。(例えば、ブルッキング・インスティチューションが行ったこの調査)
より大きな質問は、「この原則は、他のテクロノジーにも当てはまるのか」ということ。最近は、ソーラーランタンの普及についての調査がぽつぽつ出たしたとは言え(例えばコロンビア大学地球研究所のこの調査)、マラリアの調査量に比べると非常に少ない。
コペルニクのプロジェクトを通じて、このような調査をどんどんと行っていきたい。来年の1-3月にかけて、コロンビア大学のSIPAチームとインドネシアのカリマンタンで行うのも、このような調査。大学・シンクタンクの方で、調査費用を負担することが出来、適正技術普及に興味のある方は、御一報を。
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