世界にはおよそ600万人の聴覚障害者がいるとされている。貧困で、ひとり親世帯で、さらに聴覚障害を持つということは非常な苦境だ。企業家のハワード・ワインスタイン氏は、こう表現する。“発展途上国における障害を持ったシングルマザーは私の中のヒーローです。これは世界中で最も大変な仕事に違いないからです。”
現在ワインスタイン氏は、そういった聴覚障害を持ったヒーロー達を支援する第一線にいる。これまでは、発展途上国にいる聴覚障害者にとって、補聴器とその電池のコストが大きな問題であった。Weinstein氏が経営する会社、Solar Earは、聴覚障害を持った人々により手の届きすい補聴器を提供するため、手頃な価格と太陽電池、そして素晴らしい技術を組み合わせたのだ。従来の補聴器を何度も充電可能な太陽電池で動かすことにより、多くの補聴器を必要とする人々にとって、より入手しやすく、長期間使用できるものとなったのだ。Weinstein氏は言う“我々は補聴器と2-3年使用可能な太陽電池(とその充電器)を、100ドル以下で提供しています。これは、ほとんどの人が一生で補聴器の電池のみに費やすコスト以下の価格です。”この事業はすでにボツワナ、ブラジルで稼働し、近々中東でも展開される予定だ。
そしてこの技術は大きな反響を呼んでいる。過去7年間で、Solar Earは1万個の補聴器、2万個の太陽電池用充電器と、5万個の太陽電池を40カ国以上で販売した。会社はさらに今後5年間で15のさらなる独立した事業を展開予定という大きな目標をもっている。今後5年間、全ての事業で月間2万5千個の補聴器、5万個の太陽電池用充電器、そして10万個の電池を生産し、千人以上の聴覚障害者を雇用する予定である。Solar Earは発展途上国において現地の団体やNGOと一緒に働いている。
以前はカナダに拠点をおくビジネスマンであったワインスタイン氏は、聴覚障害者を雇用することによって、さらに新たな1歩を大きく踏み出すこととなる。“最初に我々が行うのは、地方の聴覚障害者用の高校を訪ね、そこの責任者たちに、(プログラムに)興味があるかどうか聞いてみます。我々のプログラムについて説明し、Solar Earで働くための条件に合った学生には、必ず学校に通い続けるということに合意してもらいます。”彼は南々協力、すなわち途上国の聴覚障害者が途上国の聴覚障害者を助け、トレーニングするプログラムを運営するという功績を始めて認められ起業家でもある。(詳しくは、Solar Earのビデオを参照:www.solarear.com.br)
従業員の雇用、特に障害などにより働く機会のない人々を雇用しているは、Weinstein氏の事業の特筆すべき特徴である。“以前ボツワナでもそうでしたし、また新たに始まる中東でのプログラムでもそうなるでしょうが、Solar Earブラジルでの私の役割は、持続可能なビジネスを経営するために、現地のカウンターパートを養成することです。私は起業家精神を教えようとしています。”
ボツワナからは、補聴器を31カ国に販売し、現在ブラジルからはさらに20カ国に販売している。Weinstein氏にとっては、非常につらい状況にあるコミュニティーを一つにまとめることは、Solar Earを設立する際の想定外の副産物であった。“私は我々の活動の結果として、平和が構築されていくのを嬉しく思います。コソボ、カシミール、トルコ東部~イラク北部のNGOの人々と話し、クルド人、スンニ派教徒、シーア派教徒の聴覚障害の若者を雇用しています。”
ワインスタイン氏の事業は、民間セクターのビジネスモデルが発展途上国のニーズに合致したもので、どのように開発目標を一番うまく達成すべきかという大きな問いに答えるものである。ジェフェリー・サックス氏のような経済学者が、さらに多くの資金が先進国から途上国に流れる必要があるとする一方で、ワインスタイン氏は、次の逸話にあらわされるように、現場の視点をもつ。
何年も前、ボツワナの大統領がSolar Earを訪れた。大統領はワインスタイン氏にSolar Earがその商品の特許を取得していないことに懸念を表明した。ジェフェリーサックス教授が発展途上国を判断する際の基準の一つは、その国の持つ特許の数だからだ。
ワインスタイン氏は“高額な特許申請料によって彼の商品の売値が2倍、3倍になり、特許権侵害に対する擁護費用がかかります”と大統領に説明した。“最終的には、Big 5のうちの1つに、我々の商品をコピーし彼らの販売力でより低価格な補聴器と充電池を途上国に提供してもらいたいと思っています。ですから、我々の場合、サックス教授の使う指標は効果的ではありません。”
特許の有無ではなく、ワインスタイン氏は大きな全体像を見据えている。“我々は現地で必要とされている支援や訓練をし、いつも欧米に支援を頼るサイクルを断ち切らねばなりません。人々が内からのやる気を出さなければ発展はありません。”
(訳は奥村礼子さんに助けていただきました)
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