2010年3月21日日曜日

携帯電話を使った識字教育

今回は、パキスタンのユネスコ事務所で働く宮沢一郎さんにゲスト投稿していただきました。


パキスタンの読み書きができない人の数は約6千万人、これはフランスやイギリスの人口と同じです。そして読み書きができない人の7割は女性です。

「携帯電話のSMSメッセージを使って、あまり外に出る機会のない若い女性に読み書きを楽しく習得してもらい、しかもみんなで繋がってもらおう。」これがこのプロジェクトのコアです。

基本の読み書きを識字センターで1ヶ月習ってもらい携帯電話を渡し、その携帯電話に毎朝、昼、夜とSMSメッセージを何度も送ります。彼女達はそれらを受け取り、何度も声を出してそれを読み、ノートブックに書き出します。メッセージの内容はイスラム教に関するものだったり、生活・健康に関するものです。

彼女達もメッセージを識字センターの先生に送ったり、友達同士で送ったりします。このコミュニケーションが楽しくて癖になります。最低、週に1回は識字センターにきて先生に質問したり、テストを受けたり、読み書きの力がどのくらい向上しているかチェックします。

プログラムが終わる5ヶ月後には彼女達の読み書き能力は大きく向上しています。スタート時は読み書き能力が中級者が1割のみでしたが、4ヵ月後には上・中級者が9割に達しました。なにより心強いのは彼女達の自信に満ちた笑顔です。読み書き能力が著しく向上することと、みんなと繋がっている嬉しさです。

プロジェクトは試験的で小規模ですが、パキスタンの最大手携帯通信会社のMobilink、地元のNGO、UNESCOで実施しています。現在拡張中です。

繋がっていたい、コミュニケーションしたい若い女性達、携帯のユーザーを増やしたいMobilink(現段階はCSRとして参加です)、識字を広めたいNGOとUNESCOの興味をつなげました。


女性一人あたりのコストは55ドル。参加者が増えれば45ドル以下になります。現在このコストはUNESCOとMobilinkが負担しています。今後の課題はコストをどう学習者が負担していくかです。究極的にはMobilinkと学習者のみの関係にならなければ、何千万人のという人にサービスが行き届くことはありません。

月2ドルで2年ローン、学習者にとって決して払えない額ではありません。仕組みづくりが鍵になります。

通信費はもっと下がり、Wimaxや3G、高性能携帯電話も5年以内に彼女達の手の届くところにくるでしょう。通信を利用して楽しみ、繋がり、知識を得たりしながら識字が拡充していきます。そして彼女達が生まれて来る子供に読み書きを教えるでしょう。

宮沢一朗
UNESCO Islamabad
Blog: 教育開発の仕事
http://miyaichi.seesaa.net/
Twitter: miya160

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