全人類の4分の1に値する15億人は未だに電気や適正な照明機器を有さずに生活している。その多くが、灯油や動物堆肥や木材、その他炭素系の燃料による照明に頼っているが、これらは空気を汚染する上、使用者は毒性の強い煙とガスに日常的に晒されることになる。さらに、これらの伝統的な形式の照明は、重大で緊急性の高い危険を有しているのである。毎年、数百万の人々が、これらの照明ランプで重度の火傷を負ったり命を落としたりしている。さらに危険性の高いランプにより火事が発生することで人々は財産を失いさらに貧困が進むという悪循環に陥っていく。
2005年スチュワート・クレインとハリー・アンドリューの2人のオーストラリア人は、それぞれの持つ専門を生かして再生可能エネルギー分野で起業をした。人道的観点を持ちながら、灯油に代わる健全で持続可能な再生可能エネルギーをより安価に提供することを企業の要に掲げた。家庭用の太陽光発電LEDライト一つで、煙の毒素に徐々に蝕まれる不安なく家族が寄り添うことができ、子どもたちは事故の危険にさらされずに勉強をすることができる。このような個別世帯への太陽光発電ライトの提供から始めたオーストラリア企業「Barefoot Power」は、現在、さらに病院や学校全体を照らすことのできる大規模な太陽光発電パネルの事業化に取り組んでいる。これらの大規模発電は後に小規模グリッドを介してより大きな効果をもたらすとされている。
「人々は1週間に1ドルをランプの灯油代に費やしています。そして1年の終わりに彼らの手元には何も残りません。私たちは、代わりに10ドルから20ドルを提供することができます」とクレイン氏は述べる。「その年の終わりに、長期的視点からも持続性が高い太陽光発電による0.5ワットと1.5ワットのデスクランプを有することが代替案です。」
明確な見通しを立てたクレイン氏は直ちに自らの貯金を集めた。「貧しい人々は私たちの10倍~30倍ものお金を払って照明の恩恵をうけています。自分の家全体、例えば、あなたのラジオ、照明、冷蔵庫をすべて単三電池で賄うことを想像してみてください。彼らの照明価値を考慮すると、太陽光発電は意義があることなのです。」
伝統的な灯油照明の代わりに太陽光発電を使うことで将来的に貯金が可能になるにもかかわらず、多くの貧困コミュニティでは太陽光発電ランプの購入への突然の出費に驚愕し導入に至らないケースが見受けられた。これに対してクレイン氏はモデルを次のように説明する、「これは見返りのある出費なのです。彼らが1週間に1ドルを使うのに対して、商品価格は10ドルから12ドルですから、10週間から11週間で資金が回収されると考えられるのです」
クレイン氏の経験は、資金回収期間が6カ月以下となれば貧困層もランプの購入を現実的な選択肢として捉えることを示した。そして現地の起業家を仲介として置き、マイクロファイナンス手法を取り入れることで、約2万世帯10万人に太陽光発電ライトを提供することができた。
2006年にヨーロッパビジネス計画コンテストで優勝したことで、100以上のマイクロファイナンス機関がBarefoot Powerに関心を寄せてきてが、BarefootPowerは少しずつ段階的に成長していくことを目指している。「私たちは現在2-3のマイクロファイナンス機関と一緒に働いていますが、次の1-2年で提携数を20-30に伸ばしたいと考えています。」とCrain氏は言う。現在、同社はアフリカと南アジアの30カ国を対象として事業展開を行っている。
クレイン氏の現在の取り組みの動機となっているのは、彼の事業に関する経済的観点からの比較論である。クレイン氏は、15億人(3億世帯)の人々が1週間あたり平均1USドルをランプの灯油に費やしているというLuminaプロジェクトの調査結果を引用しながら、この総額を計算すると世界銀行や大手援助機関が地方電化プロジェクトに年間支出する金額の10倍以上になることを指摘した。「貴重な現金が事実上燃やされている。」とクレイン氏は言い、「村人たちに灯油を燃やす、すなわち彼らのお金を燃やすことを辞めさせることができれば、それらを長期的な財産への投資に回すことができるのです」と語った。
燃やしていたお金をより賢く生産性のあるエネルギー供給への投資へと変えていく「転換」こそが、クレイン氏の目指すより広い意味での貧困削減への道のりといえる。「私たちが手をつけられる様々なエネルギー開発の中でも、灯油照明市場から太陽光発電への転換は極めて障壁が少なく、かつ最も直接的な効果が期待できる部分なのです」とクレイン氏は述べ、「近代的なエネルギーへのアクセスがなければ貧困は撲滅されないでしょう」と語った。
[今回は渥美(八木)恵里子さんに翻訳をしていただきました。ありがとうございます!]
素晴らしいBOP事例として
返信削除http://blog.livedoor.jp/upks/ へ
一部写真とともに引用させていただきました。
SIOネットワーク 施 治安 haruyasu@sannet.ne.jp
施様、有難うございます。大阪ではお世話になります。
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