2011年8月7日日曜日

コペルニク・フェロー Takuro便り17 Charcoal projectのこれからその2-1

前回の続き

3) パイロットプロジェクト1(2)

1月に始まったパイロットプロジェクトを運営するに当たって、一つ考えなければいけないポイントが出てきました。それは、如何に材料を調達するかです。

材料の調達-

この問題が一番深刻でした。このエントリーで述べましたが、炭になる材料は、サトウキビ、トウモロコシの枝、トウモロコシの枝の3点ありますが、それぞれに収穫時期、収穫場所、重要、畑所有の有無の4つのファクターによってどれだけの材料を集める事ができるかどうかが依存してしまいます。特に、1年に2回ある雨季では乾燥した材料を集めるのが困難なので、炭の生産量が急激に落ちる事が容易に想像できます。

どうすれば良いのかと悩んでいた時に気が付いたのが製糖会社の存在。西ケニアには10社以上の製糖会社があり、サトウキビから砂糖を生産しています。そして、偶然にもアフリカで2番目、ケニア最大のMumias Sugar Companyという製糖会社がホストファミリーの家から10kmほどにありました。製糖会社ではサトウキビから砂糖の原料を取り除いた後、廃材を捨てているという情報を得たので、これは利用できると思いました。しかしながら、その後いろいろと情報収集をすると、(このブログ参照) 実はサトウキビの廃材は今では捨てられずに工場内でボイラーとして使用しているという事が分かりました。特にMumias Sugar Companyの場合は、大量のサトウキビを使用するためその廃材を火力発電として利用し、政府に電気を売っています。という訳で、Mumias Sugar Companyが私たちにサトウキビの廃材を提供するベネフィットを考えなければなりません。Kopernikの代表のとしさんとも相談し、炭の命名権を与えるCSRと関連付けるという2つのベネフィットを考えました。1

また、幸運な事に、このプロジェクトに関わっているケニア人の友人の叔母がMumias Sugar で働いていて、Corporate Manager Mr. Athmanと知り合いという事が分かり、Mr. Athmanに会って、サトウキビの廃材を提供してもらうように提案しました。Mrs Arthmanはこのプロジェクトにとても興味を持ってくれて、結果的に廃材の提供を許可してくれました。

Mumias Sugar Companyからのサトウキビの廃材(私の帰国後)

4)パイロットプロジェクト2 (2月中盤~3)

4.1 パイロットプロジェクト2のスタートアップ

パイロットプロジェク1の様子を観察し、Beneficiariesもモチベーションを持って炭を生産している、また農業廃材から作った炭を売れるマーケットもあるという事を考慮し、プロジェクトを拡大する事にしました。ということで、2月中盤からは、私の出国が迫りつつある中、現地で協力してくれる現地のNGOとミーティングを開き、以下のポイントを議論しました。

ターゲットの選定運営チーム運営の仕組み3点を議論しました。

ターゲットの選定

ターゲットは村で一番貧しい人々に焦点を当てる事にしました。村で一番貧しいというのは、安定的な収入源がないにも関わらず、夫を亡くし、子供たちを一人で育てている女性です。まとめると、ターゲットは夫を亡くし、尚且つ1ヶ月の収入が2,000Ksh以下の女性にしました。

運営チーム

プロジェクトを持続的に回すためには、運営チームがそれぞれの役割をモチベーションを持って取り組む必要があります。

- 組織体制

役割分担をするためには、まずどのような役割が必要なのかを議論しました。

議論をした結果、上記のように決まりました。そして、現地にいるNGOのスタッフの数は全部で3人なのでそれぞれの役割を決めていきます。NGO(Rural Community Information Center)の代表であるJosephは、プロジェクトリーダーを、ナイロビ大学のビジネススクールに通ってるJoabには会計をやってもらい、唯一女性のSharonhにはBeneficiariesのコーディネーターになってもらいました。ミーティングは月1のペースでして、そこで問題点を議論するようにします。このミーティングには、NGOのスタッフ3人とBeneficiariesのリーダーが参加します。

しかしながら、このような組織体制は前提として各スタッフがモチベーションを持って取り組まなければなりません。

- モチベーションを上げる仕組み

ということで、この仕組みは非常に重要です。しかしながら、これは前回構築する事ができなかった点です。ベストな方法は、貢献した分に比例して賃金の対価を与える事です。しかしながら、パイロットプロジェクト2が動き出していなかったという事で、実際にどれだけの収入が入るか予想が付かず賃金の対価を決めることができませんでした。この点は、次回構築しなければいけないポイントです。

運営の仕組み

-ローン


炭を作るためには、ドラム缶(1,700Ksh)、コンプレッサー(400Ksh)2つが必要です。パイロットプロジェクト1では、これらを無料で配布しましたが、今回のプロジェクトでは規模を30人ほどに拡大する、プロジェクトを持続的にたくさん人に関わってもらうためこれらをローンとして渡す事にしました。

上記の図の通り、理想的な条件では3ヶ月間炭を生産して売る事により、ローンを返済する事が可能です。返済されたお金はNGOに戻り、そして新たな30人のBeneficiariesに渡ります。このように、ローンにする事により長期的にたくさんの人が恩恵を受けるようになります。

-運営

私の帰国が迫る中、私が帰国してもプロジェクトが回り続けるように暫定的な運営の仕組みをNGOの人々と議論しました。具体的には、どうローンの資金を効率的に回収するか、どうBeneficiariesのモチベーションを維持するかです。そこで、チーム制生産・流通場所の一元化、運営体制の決定を行いました。

- チーム制

チームを組ませるのは、マイクロファイナスの事例から上手く機能する事が分かっています。西ケニアの田舎でも仲間と一緒に何かをやるという文化 (例えば、メリーゴーランドのようなsaving clubがあるので、NGOからも31組でチームを組ませるのはどうかと提案されました。チームを組ませれば、分からない事、困った事があれば相談する事ができますし、団結力でモチベーションが維持される事が期待されます。

- 生産・流通場所の一元化

当初は、ドラム缶とコンプレッサーを各チームに分け与え、マーケット開拓も各チームに任せ、月に1回くらいのペースで資金を回収しに行く仕組みを考えていました。つまり、生産場所、流通経路は全てBeneficiariesに任せということです。しかしながら、これでは実際にどれくらいの量を生産したのか、どのくらいの収益を上げたのか等を確認する事が困難になってきます。実際にビジネスをしている50人以上の女性にインタビューをしましたが、利益等の記録を取っている人はほとんどいませんでした。そのため、生産場所、流通場所を同じにすることにより、管理体制を単純化する事ができます。イメージ的には小さな町工場のようなイメージです。また、このように場所を一元化する事により、他の利点もあります。1つ目にMumias Sugar Companyから2トンほどのサトウキビの廃材を運ぶので場所が同じである方が一々回収するという手間がなくなります。2つ目に同じ場所で働く事により、連帯感が生まれモチベーションの工場に繋がると期待されます。

4.2 ワークショップ

プロジェクトの詳細を決めた後、残すところはBeneficiariesへのトレーニングのみとなりました。そこで、35日にこの炭プロジェクトの集大成であるワークショップを開催しました。ターゲットは事前にこの炭プロジェクト運営してくれる現地のNGOとミーティングを重ねて、5Km平方ほどの村にある15エリアから2人ずつ、合計30人を選びました。

- 準備

30人規模のワークショップを開くという事で、事前に準備しなければ行けない事があります。ワークショップの設計はもちろんながら、炭を作るためのドラム缶10個を15Kmほど離れた町から取りに行かなければなりません。

ドラム缶10個を一つ一つバイクで運ぶという異様な光景。

そして、忘れてはならないのがご飯とジュースの準備。ケニアでこのようなワークショップを主催する時は、いくら参加者に利益があっても主催者がご飯とジュースを準備するのが暗黙の了解となっています。

ジュース

最後にNGOの一人がマスコミとのコネクションを持っていたので、マスコミも呼ぶ事にしました。

- 本番

いよいよ35日になり、本番を迎えました。集合時間午前9時。初っ端からケニアの文化という物を感じました。集合時間になっても少数のグループしか集まりません。事前の打ち合わせでは、Beneficiariesとコンタクトを取っているNGOのスタッフが大丈夫と言っていたのにです。その後も、いつ来るのかと聞きましたが、いつも”They are coming”というお決まりのセリフを言うのみです。ここで、初めて郷に入ったら郷に従えということでこの文化を受け入れる事が重要なのだなと思いました。

集合時間には3人しか集まっていない。

11時になると漸く人が集まってきたので、ワークショップを開始します。

プロジェクトリーダーのJosephが説明

トレーニング開始

集合写真

他の写真はこちらのリンクから。

マスコミの方も昼過ぎに来てくれました。そしてなんとその日の夜に、ルヤ族(ケニアで3番目に大きい民族)最大のラジオ局でこのワークショップが紹介されました。そして、数ヵ月後にケニアで最大の新聞Daily Nationに取り上げられました。詳しくはこちらから

以上、私が前回やった炭のプロジェクトの総括でした。

1 Mumias Sugar Companyを説得するアイデア

炭の命名権は、炭を今後市場出す時にMumias Sugarという名前を利用する事により、それが会社のプロモーションに利用できるという点です。CSRとの関連については、Mumias Sugar Companyが元イギリス資本の会社であったという事で既に様々なCSR活動をしていました。特に、工場で排出する温室効果ガスをオフセットする目的で、年間10万本の植林をしています。(http://p.tl/u3I7)しかしながら、森林の割合を増やすには植林だけでなく森林伐採も止めた方が効果的で、それがサトウキビの廃材を利用できたら面白くないですかという提案しました。実際に調べてみると、植林1本する毎に28本の木が伐採されているそうです。http://afrol.com/features/10278

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