2011年6月17日金曜日

コペルニク・フェロー Takuro便り16 Charcoal projectの振り返りその1

(by 前コペルニクフェロー 原口拓郎)

お久しぶりです。

原口です。日本に帰国し早いもので3ヶ月が経過しました。前回のエントリー(炭のプロジェクトのImpact)からしばらく間が空いてしましましたが、今回のエントリーでは振り返りも含めてプロジェクトの進展を時系列で振り返ってみたいと思います。

1. 炭プロジェクトの開始 (12)

炭プロジェクトの最初の月は、炭プロジェクトを主導する立場という事もあり、自分自身で炭作りをマスターする事も目的としました。ここで注目した点は単純にMITに載っている道具を使用するのではなく、もっと安価でシンプルな物を代替できないかという事を試した点です。結局は、比較テストの結果からMITのプロダクトが一番良いという結論になりました。

コンプレッサーの代替品

1.1 手で固める(1127)

1.2 ジャム缶と木材(1211)

1.3 MIT コンプレッサー(1218)

詳しくは以下のブログから。

2. パイロットプロジェクト1の開始(1)

1月にやった事は、パイロットプロジェクト1を開始した事と炭のマーケティングをした事です。炭作りのだいたいのコツも分かってきたところで、1月からは小規模でパイロットプロジェクト回す事にしました。パイロットプロジェクトして小さなグループでまわす事により、運営上の問題が如実に分かってくるはずです。また、マーケティングではどれほどの需要があるかを各マーケットを訪れてリサーチしました。

2.1 パイロットプロジェクトの運営

a) Beneficiariesの決定(112)

まずは、パイロットプロジェクトに協力してくれる人たちを選びます。選ぶ軸として、私が住んでいるホストファミリーの家から近い事、そして安定的な収入源がない事にしました。その結果、3組の家庭を選びました。そして、それぞれ家に赴き、面談をして、このプロジェクトをやってみたいかの意思確認をしました。

Beneficiariesとの面談

b) 小規模ワークショップの開催(114日、120)

次に、炭の作り方をトレーニングしていきます。事前に告知をして、3組の家庭に、主に男性3人と女性1人に合同で炭の作り方を教えるワークショップを開催しました。下記で述べますが、この時点で既に1組の家庭(男性)がそもそものワークショップに参加しませんでした。

1組の家庭が抜けてしまった、1回だけでは十分ではないという理由から2回目の小規模ワークショップを開催しました。ここでは、beneficiariesに主体的に作ってもらうという形式を取りました。

ドラム缶の搬入

ワークショップ

c) 個別プロジェクトの開始(127)

小規模ワークショップを私のホストファミリーの家で開催していましたが、炭の作り方が一通り分かった時点で、道具を各家に持っててもらい個別にプロジェクトを運営させるようにしました。ここで、1組の家庭(男性)が道具をいつになっても取りに来ず、プロジェクトから抜けてしまいました。

失敗- コミットメントのさせ方-

ここでのチャレンジは人をどのように巻き込むかでした。結果から言いますと、人選で最初に選んだ3組のうち、2(男性)1ヶ月しないうちに途中でプロジェクトから抜けしまいました。彼らは、安定的な収入源がないにも関わらずです。また、このパイロットプロジェクトでは炭を作るための道具(ドラム缶、コンプレッサー)をタダであげていますし、この炭プロジェクトが如何にベネフィットを生むかも話しました。なぜ、途中でやめてしまったのか?どうすれば良かったのか?とその後色々と考えました。

色々と考えた結果、単純に貧しいからお金を生み出す技術を上げても意味がないケースもあるのだと思いました。途上国では、外部的環境、例えば生まれた環境、によって貧しいという側面が強調されますが、単純に働くやる気があるかどうかも大きなファクターだと思いました。一方、男性と違って女性はやる気を持って働く傾向がありそうです。家事、教育費等のほとんどを妻が面倒を見ているので、どうしてもお金を稼がなければいけないという事情があるのでしょう。実際に、田舎のローカルマーケットに行けばたくさんの女性が様々な商品を売っていますので起業家精神に溢れている事が分かります。何が言いたいかというと、プロジェクトの対象は単純に貧しい人というだけではなく、どれだけやる気を持っているのかという部分も含めて見ないとプロジェクトが途中で止まってしまう可能性があるという事です。

2.2 マーケティング

パイロットプロジェクト1が動き出しましたが、Beneficiariesの各家庭が炭を生産しても、それを売る場、マーケットがないと本末転倒であるという事で、ニーズ調査に乗り出しました。具体的には、顧客として魅力的なレストラン、炭の卸業者等を回り、炭のサンプルを配って翌日にフィードバックをもらい顧客を確保していくというプロセスを取りました。

a) サンプルの配布

炭を売り出す前にまずは、人々に自分たちが作った炭がどれだけ効果的を確認してもらわなければなりません。ということで、ホストファミリーのある場所から近い4つの場所でサンプルを配りました。

Lunganyro(124)

距離:自分たちが住んでいるLubangaから最も近いマーケット。

特徴: とても小さなマーケットでレストランが全部で3件しかありません。しかし、メリットとしては距離が一番近いので交通費を掛けないで炭を運ぶことが可能です。


ターゲット:レストラン

配布場所: Lungayroには3軒のホテルがあるので、さっそく配布しに行きました。

このレストランのオーナーPaulさんは1tin50Kshで是非購入したいと言ってくれました。

さっそく炭の効果をテスト中

Munami(125)

距離:Lubangaから2番目に近いマーケット。

特徴:マーケットが奥に広がり、Lunganyroと比較すれば大きいマーケット。レストランの数も全部で6件あります。

ターゲット:レストラン

配布: 6軒中5軒のレストランと2軒のキオスクと1軒の仕立て屋に配布しました。

レストランのマダムもご満悦の様子。


たくさんの人が集まってきました。

Sibale(124)

距離:Lubangaから20Kmほどにある大きなマーケット。

特徴: Sibaleマーケットの直横には東アフリカで一番大きい砂糖の会社“Mumias sugar ”があり、そこには何千という従業員のための集合住宅がある。そのため、集合住宅に住んでいるたくさんの人がSibaleマーケットで炭を購入して行きます。なぜなら、この集合住宅には電気も通っていて、料理をする際には炭を使用するからです。また、集合住宅が近くにあるという事で、焼き魚の需要も高い。そのため、Shibaleマーケットではたくさんの人が焼き魚を路上販売している。もちろん、魚を焼くには炭が必要です。

ターゲット:焼き魚の路上販売

配布:レストランの人は今まで配布してきたので、Sibaleでは焼き魚の路上販売している人を中心に配りました。

Mumias(124)

距離:Sibaleから3kmほど行った所にあるTown

特徴: Mumiasはこの辺りでは大きなTownとなっています。Mumiasに来れば大抵何でも手に入ります。そのため、たくさんの人がMumiasに集まってきます。ということで、レストランの数も20軒以上あり、炭を大量に売買するリテーラーもいます。

ターゲット:ホテル、炭のリテーラー

配布:ホテルと炭のリテーラーに配りました。

各マーケットの位置関係

b) サンプルへのFeedback

サンプルへのFeedbackは基本的に満足という声が多かったです。

ここでは、2人からのフィードバック(生の声)を紹介します。

・仕立て屋@Munami

(補足)専用のアイロンの中に入れて使用するため、炭は細かくします。そのため持続時間も短くなります。

・炭のリテーラー@Mumias

炭のリテーラーのOkumuさん

この炭の効果に満足したOkumuさんは70Kgサックを500Kshで購入したいと言ってくれました。

実際に、幾らで購入したのかというインタビューした結果、以下のような価格表が完成しました。

Munami

Ruganiro

Koyonzo

Shibare

Mumias

1 Tin

60Ksh

60Ksh

65Ksh

90Ksh

90Ksh

50Kg bag

200Ksh

200Ksh

225Ksh

300Ksh

300Ksh

70Kg bag

300Ksh

300Ksh

350Ksh

500Ksh

500Ksh

100Kg bag

400Ksh

400Ksh

450Ksh

600Ksh

600Ksh

D-labで開発された炭の値段

Munami

Ruganiro

Koyonzo

Shibare

Mumias

1 Tin

70Ksh

70Ksh

80Ksh

100Ksh

100Ksh

50Kg bag

250Ksh

250Ksh

300Ksh

400Ksh

400Ksh

70Kg bag

400Ksh

400Ksh

450Ksh

600Ksh

600Ksh

100Kg bag

500Ksh

500Ksh

550Ksh

700Ksh

700Ksh

木炭の値段

と、上記のように従来の木炭と価格面で差別化を計ることに成功しました。

奥にあるのが100Kg bag。右の手前にあるのが70Kg bag

1Tin

関連するブログ

失敗-価格設定-

上記のように木炭よりも少し安い値段に設定すれば顧客が存在する事が分かりました。その後、この結果をBeneficiariesにも共有しました。しかしながら、いざBeneficiariesの一人(Henry)に顧客を紹介して、Henryが売った時に事前に決定した価格は安すぎると主張して、ネゴシエーションして少し高い値段で買ってもらっていました。その後、お店の人からは事前に決めた価格と違うとクレームを言われ、Henryからはそれでも安すぎるとクレームを言われました。このように、ここでの失敗は炭プロジェクトのサポーターである私がプロジェクトに入りすぎて、Beneficiariesと顧客の対話なしで価格を決定してしまった事にあります。つまり、このプロジェクトでの自分のスタンスが明確に決まっていなかったという事です。

初めての売買成立

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