2011年6月29日水曜日

kopernikフォーラムの報告

(文責:玉懸 光枝)

6月3日、第一回目のコペルニク・フォーラムが開かれた。当初予定していた311日の開催が東日本大震災によって急遽中止となり、3カ月を経てようやくこの日に実現したということから、今回のフォーラムも、震災を機に大きく変わりつつある日本社会や国際協力のありかたについてゲストや参加者と一緒に考える場となった。

開会のあいさつに立ったコペルニクの中村代表は、まず「奇しくも私たちがもともとフォーラムを開催しようとしていた日に東日本大震災が発生したことに何とも言えない因縁を感じた」と311日を振り返った上で、コペルニクが3月から4月にかけ6回にわたってソーラーランタンやソーラー補聴器を被災地に届けた緊急支援について紹介し、「多くの方々のお力添えと御協力によって、コペルニクが被災者の方々に希望を届けることができた」と関係者に謝意を述べた。続いて、実際に東北まで車を走らせランタンや補聴器をボランティアで被災地に届けてくださった株式会社ウインローダーの高嶋民仁・代表取締役社長と、届けられたテクノロジーを石巻地区で被災者の方々に配布してくださった羽熊広太・青年海外協力隊OB会会長が登壇。被災地の様子やテクノロジーの使われ方などについて報告をいただいた。

その後、途上国が抱える社会課題を解決する日本発の製品をつくろうとコペルニクが主催している「See-Dコンテスト」について、コンテスト実行委員の梅澤陽明さんが説明に立った。昨年7月から実施されているこのコンテストでは、デザイナー、企業人、学生ら多様な人々がチームを組み、「世界を変えるタネを探そう」を合言葉に製品づくりに取り組んでいる。梅澤さんは、東チモール視察やプロダクトアイデアのラフ案を製作した第1部の様子や、ビジネスモデルとプロダクトアイデアを精査した第2部の選考会の様子を写真で紹介しつつ、勝ち残ったチームが今後第3部に進み、現地で普及活動を本格化させる予定であることを明らかにした。

続いて中村代表は、国際会議にも数多く出席し援助動向の変化に詳しい荒川博人JICA上級審議役と、カンボジアに対する社会投資ファンドを立ち上げたARUN,LLC功能聡子代表をパネリストに招き、「途上国における国際開発とイノベーション」をテーマにパネルディスカッションを行った(コーディネーターは小木曽麻里・コペルニクアドバイザーが務めた)。

まず、ODAを取り巻く状況と価値観の変化について問われた荒川氏は、「今日、援助は相対化が進んでいる」とした上で、特に変化が顕著な側面として「プレイヤー」「ゴール」「手段」の3つを指摘。「雇用を生む民間企業や、圧倒的な援助規模を誇る民間財団、さらにG8の枠組みに入らない新興国など、世界の貧困問題を解決するプレイヤーが変化するにつれ、手段もゴールも多様化している」と述べた上で、「トータルなピクチャーの中で個々のアクター間がシームレスに連携することが必要」だと述べた。また功能さんは、カンボジアにおける官民のパートナーシップについて、「官民のパートナーシップはまだまだ大企業レベルの話」だとしながらも、「例えば新たな農業技術をNGOが導入し、村で普及すると官が取り入れ政策に導入されるというケースも見られるようになった」ことを紹介。「長い援助の歴史の中で、社会課題にかかる解決を一緒にやっていこうという機運は少なからず培われているのではないか」との見方を示した。

また、コペルニクが途上国に届けているテクノロジー製品については、荒川氏が「現地でインパクトを出すためには、ある程度の規模で展開することが必要。そのためには、通関の問題も含めたリスクシェアリングとファイナンスを構築すべき」、功能氏が「扱っているテクノロジーはいずれも途上国で関心が高いものばかり。これからは、“まず試してみたい”というエントリーポイントをどう広げるかがカギ」とコメント。これに対し、中村代表は「様々なアクターが国際協力にかかわることによって様々なアイデアが生まれ、効率性が上がる。開発援助機関ならではの仕事とコペルニクのような新たなアプローチをうまく融合させていきたい」などと答えた。

さらに、ディスカッション終了後、参加者の一人から「既存の国際協力との連携は考えていますか」という質問が出ると、中村代表は「31のプロジェクト11つから学ぶことが多いので、当面は今のモデルをしっかり回していきたい」と回答。その上で、シェラレオネの総選挙支援プロジェクトで携帯電話フロントラインSMS機能を活用し暴力行為の有無を報告する体制を立ち上げたというUNDP時代のエピソードを紹介し、「国家の枠組みを作るガバナンス支援のように従来の援助機関が重要な役割を占める分野でも、このような形でテクノロジーとの連携が進めば」との期待を寄せた。

最後に、コペルニクの寄付企業である大和証券グループ本社広報部CSR課の岩井亨氏が「インパクトインベストメント商品の開発を行っている当社にとってコペルニクの活動は大変興味深い」とあいさつ。フォーラムは、熱気あふれる雰囲気の中で盛況のうちに閉会した。

 コペルニクでは、今後もこのようなフォーラムを開催する予定です。ご関心のある方はぜひお越しください。

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