在日華僑の熱い志をコペルニクが事業支援!
内モンゴルのソーラーパネル付LEDランプ事業に出資した施治安さん(55)この夏、太陽の光で充電できるソーラーパネル付きLEDランプのFireFlyとD-lightが100台ずつ、中国内陸の内モンゴル自治区、オルドス市近郊の村々に届けられる。現地で砂漠緑化に取り組むNGO「オルドスの風」からのニーズ書に賛同して2,855ドルを投資した施治安さんの思いとは。
のべ120人目の投資者となる施治安さんは、在日華僑三世だ。大阪で生まれ育ち、レジャー関係のビジネスに身を置いていたが、5年前、50歳を機にその第一線から身を引くことを決意。「余生は社会貢献にあてよう」と、2年前に「ソーシャル・イノベーション大阪ネットワーク」(SIO Network)を立ち上げた。社会起業家や事業型NPO、政府や企業内のプレイヤーらを実践的につなげて環境問題や新しい福祉、多文化共生といった社会的な課題に取り組む、いわばソーシャルビジネスのプラットフォームである。以来、大阪を拠点に、講義や啓蒙イベント企画・マーケテイング支援など、幅広く取り組んできた。
高校時代から在日外国人の置かれている難しい状況や差別問題について学んできた施さんは、日本とアジア諸国の間に横たわる歴史観の齟齬やしこりをいかに乗り越え、どうすれば多文化共生を実現できるか考え続けてきた。「中国人の自分が日本社会に貢献することで、日本人が持つ中国へのイメージもよくなってほしい」。 50歳の時の一大決意以来、施さんの活動を支えているのはそんな願いだ。
施さんは、東京で起業支援を行うETICからの紹介で、SIO Networkが窓口となって中村代表の関西講演を開いたのを機にコペルニクのことを知った。「世界のBOPビジネスをつなぐネットワーク・イノベーションを想定したコペルニクのオペレーションに感銘し、このビジネスモデルにぜひ協力したいと思いました」と振り返る。投資先には、以前から人づてに話を聞いていた坂本毅さんの「オルドスの風」を選んだ。「彼なら自分の思いをしっかり実現してくれるでしょう」。施さんが坂本さんに寄せる信頼は篤い。
今回、施さんは中国内陸部の無電化地域であるオルドスの人々にソーラー付きLEDランプを届けるプロジェクトに投資した。この地域の人々は、これまで平均月収46ドルのうち約8ドルを夜間照明用のろうそく購入にあてている。しかし、このランプは昼間に太陽で充電するため恒常的な費用はかからない。1台10~15ドル程度のランプを買って分割ローンで返済すれば、返済が終わる5カ月目以降はこうしたコストを将来的に貯金や子どもの教育費などに回すことが可能になる計算だ。LEDランプをただあげるのではなく、ローンを組んで返済する仕組みだからこそ、人々はランプを大切に使い、自立も促される。
この夏、内モンゴルの坂本さんを訪ね、FireFlyとD-lightが実際に各家庭でどう使われ、生活がどう変わりつつあるか視察する予定の施さん。「見てきたことを発信し、両国のメディアやファンドから協力を得つつ、この地域の貧困層に世界からの共感と支援をさらに集めたい」と意気込んでいる。「生まれ育った日本と母国である中国を橋渡しして、両国に社会貢献したい」――。 施さんの長年の夢がオルドスの人々を照らす日は、すぐそこまで来ている。
(インタビュー、文:玉懸 光枝)
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