2010年9月25日土曜日
CGIの様子
2010年9月21日火曜日
CGIでコペルニクがフィーチャーされました
2010年9月15日水曜日
シエラレオネからのうれしい知らせ
2010年9月14日火曜日
コペルニク・パートナー D-Light
2010年9月12日日曜日
「寄付と投資、2つのツールがもたらす可能性」ミュージックセキュリティーズの杉山章子さん
投資ファンドで寄付モデルを実現した仕掛け人
ミュージックセキュリティーズ(コペルニク日本普及窓口)杉山章子さん
国際人権NGOの韓国事務所でインターンを経験した。NGOのボランティアとしてコソボにも赴任した。バングラデシュやヨルダンのマイクロファイナンス機関でインターンをしたこともあるし、政界に身を置いていたこともある――。「世の中の不公平を解決したい」という思いを胸に、さまざまな角度から自分なりの解決策を探し続けた杉山章子さん。「ようやくここまで来た」と当時を振り返る彼女が見つけ出した答えとは。
「今は寄付と投資、2つのツールが手元にあるからハッピーです」。貧困削減のアプローチ法を探し続けてきた杉山さんが、満足気に微笑む。日々の充実ぶりと自信が伺える、晴れやかな表情だ。
実は、杉山さんがこう考えるようになったのはつい最近のこと。それまでは、「チャリティーではなくビジネスを通した支援」にこだわっていた。大学時代にアフリカのガーナに留学し、欧米人学生が現地の子どもたちにせがまれるまま金品をあげる姿に違和感を抱いて以来、「“あげる”“もらう”の関係は一時的な解決に過ぎない」と思っていたのだ。その後、再び留学したアメリカ・コロンビア大学でマイクロファイナンスに出会い、「投資したお金が途上国に回る仕組みを作れば、目の前の人だけでなく社会自体を変えられる」と気付いた。帰国後、国際協力銀行(JBIC)の専門調査員として働きながらNPO「リビング・イン・ピース」の勉強会に参加していた杉山さんは、日本にもマイクロファイナンスを広めようと開催したフォーラムでミュージックセキュリティーズ(以下、MS)の小松社長と出会い、導かれるように同社に転職。ファンの投資を募ってアーティストを応援する音楽ファンドを運用する同社で、1口3万円の出資をカンボジアのマイクロファイナンス機関に届けるファンドの立ち上げに奔走。念願だった投資による途上国支援の仕組みを実現した。現在、第1号と第2号が運用中で、第3号が準備中である。
「寄付」との出会い
2009年暮れ、コペルニクの中村代表を知人に紹介してもらった杉山さんは、途上国のNGO、テクノロジーを有する企業、一般の寄付者をつなぎテクノロジーを途上国に届けているコペルニクの活動に賛同し、MSとの共同事業化を考えるようになる。何より、エンドユーザーをしっかり見る姿勢が気に入った。
しかし、すんなりとは進まなかった。MSはあくまで営利企業である。「寄付を集めテクノロジーを現地のNGOに無料で配布しているコペルニクが本当に投資の事業を行えるのか」「ファンドの立ち上げはできるのか」という意見もあった。杉山さんは、コペルニクがテクノロジーを無料で配布するだけでなく、事業化が可能な場合はリース制の導入やマイクロファイナンスの活用も求めていることを説明した上で、「寄付はこれから事業化していく際の初期投資」「新規市場開拓のためにも長期的に見るべき」と訴えた。もともとMSの音楽ファンドに「金銭的なリターンとファンコミュニティーへのリターンをセットで考え、合計を最大化する」という思想があったことも奏功し、「コペルニクが扱うプロジェクトは、金銭的リターンはなくても、コミュニティーへのリターンが大きな投資」という発想で、MS初の寄付モデルが立ち上げられた。
この経験は、杉山さんにとって大きかった。ゆくゆくはビジネス化を目指していてもスタートアップのための資金がなければ第一歩を踏み出せない事業もあれば、開発段階やイシューによってはチャリティーや税金(ODA)でなければ支援が難しいケースもある。投資だけにこだわらず、寄付を含めいろいろな資金を適切に組み合わせることで、より総合的に貧困問題に対応できることに気付いたのだ。実際、寄付という選択肢が増えた途端、事業のフェーズや課題に応じ投資と寄付の割合を自在に変えることが可能になった。「ツールが1つだとできることは限られるけれど、2つになるとこれまで諦めていたピースとピースがつながっていく。可能性は2倍ではなく、3倍にも4倍にもなるんです」。
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いまや、「寄付」と「投資」の間を自由に行き来するようになった杉山さん。多くの人に少しずつ支えてもらうと同時に、日本でもマドンナやアンジェリーナ・ジョリーのようなセレブな高額の支援が広がれば面白いと寄付にも夢を感じる。一方で、急速に認知度が高まったマイクロファイナンスを一時期のブームやファッションに終わらせないよう、論文発表にも励んでいる。週末もミーティングやイベント準備に駆り出され、息つく間もない毎日だが、「仕事で好きなことをやれている」から、つらくはない。「自分の時間がほしくならないですか?」と尋ねると、「仕事とプライベートがシームレスに楽しめているから大丈夫」と答えた後で、「でも、ちょっと忙しすぎるかな。婚活もやらなくちゃ」とおどけてみせた。
「今が一番充実していて楽しい」と笑う杉山さんは、やっとたどり着いた貧困削減の仕組み作りに、今、確かな手応えを感じている。
(インタビュー・文:玉懸光枝)