2010年2月26日金曜日

「発明者に聞く」 Qドラムのピエト・ヘンドリクス氏

これも奥村礼子さんに訳していただきました。有難うございます。原文はこちらで。Qドラムを使用したプロジェクトへの寄付はこちらから出来ます。

発展途上国において、毎日の生活用水を運ぶことは、最も骨の折れ、しばし危険を伴う仕事の一つである。しかし、毎日の50リットルにもおよぶ生活用水の運搬を飛躍的に簡単にする、非常にシンプルな解決策が発明された。この「Qドラム」は真ん中に穴ある大きな円形の容器だ。発明家のPiet Hendrikse氏は“古くなった衣類、ロープ、あるいはより糸などどんなものでも簡単にこのQドラムを引っ張ることができるのです。”と話す。あまりに単純な解決策なので、これまでどうしてこのような方法が使われていなかったのか多くの人が不思議に思ったほどである。

しかし実際は、Qドラムの生産は想像以上に困難であることが分かった。“真ん中の穴を作ること、(つまり)ローターの型づくりは、最も複雑でコストがかかりました。” Hendrikse氏は言う。他に生産が難しかった点は、Qドラムの厚さである。“極度な耐久性が必要なのです。薄くてはダメ。この点が生産コストを上げてしまいました。”

現在Qドラムは市場に出まわるようになり、多くの地域で見られる水の運搬という共通の問題を解決している。Hendrikse氏自身、その問題を直接目のあたりにしてきた。“私は南アフリカの北部に住んでおり、そこから約30キロ離れたところによく車で出かけていました。村々を通りすぎる際、人々が毎日の生活用水を運ぶために、一輪車や古い給水ドラム缶を押している姿を見ました。しかし、この運搬の仕方は持続可能ではありません。私は何かもっと簡単な方法があるのではないか、と考えるようになりました。”

“ある日私の兄弟が訪ねてきた時に、彼にこの問題について話しました。そこで我々は、真ん中に穴をあけて、そこにロープを通すことを考えついたのです。しかし、一番の問題は、それをどのように製造するか、ということでした。私はまずは試作品を作り、村の人々に使ってもらったのですが、彼らは熱狂的に喜んでくれました。”

このQドラムが、Cooper- HewittDesign for the Other 90 Percentに展示されたのをきっかけに、このシンプルな水の運搬器具は、急激に世界中の注目を集めることとなった。

“QドラムがCooper-Hewittで展示された後、事業が本格的に発進しました。そして現在では世界中から問い合わせがきています。”しかし、Qドラムの販売にはまだまだ障害がある。Hendrikse氏はこう続けた。“5個あるいは10個のQドラムを送る場合、輸送費がQドラムそのものの費用を上回ることになります。これは我々にとってやはり大きな問題です。”

Hendrikse氏は、Qドラムが、それを最も必要としている人々にとって手が届く商品になるよう、(輸送)コスト削減のために多くの国際機関やドナーとの協働について模索している。“Kopernikのような組織との協働は、そういった努力の結果です。しかし、本当に時間がかかります。”

Qドラムを現地に輸送するまでは大変だが、いったんQドラムを使い始めたら、その輸送能力は優れたものだ。Hendrikse氏はそれを“Africa-proof””と表現する。 “Qドラムは平均して最低5年間は使用可能です。私は毎日6キロ以上の距離を、8年間使用されているものも見ました。ほとんど損傷はなく、今も力強く働いてくれています。”

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